アパレル業界では、多品種・小ロット・短サイクル化が進み、在庫管理の精度とスピードがますます求められています。 こうした中、RFID(電子タグ)を活用した業務効率化の取り組みが広がりつつあります。本稿では、特に「棚卸」「入出荷検品」「在庫探索」「ヒューマンエラー削減」の4つの観点から、RFID導入の具体的な効果を整理します。
多くのアパレル企業では、在庫精度を保つために2カ月に1回(年6回)程度の棚卸を行っています。従来のバーコード方式では1点ずつ読み取る必要があり、店舗あたり数日間の作業が発生していました。
RFIDでは、非接触で複数の商品を一括読み取りできるため、棚卸時間を90%以上短縮できるケースが一般的です。例えば、1回の棚卸に5人×1日かかっていた作業が、半日で完了する事例もあります。
10店舗規模で年間6回棚卸を実施する場合、年間約2,000時間(約400万円相当)の労働コスト削減が見込まれます。
また、閉店後作業や休日対応が減ることで、スタッフの負担軽減にもつながります。
店舗や倉庫での入出荷検品も、RFIDによって大幅に効率化されます。従来はバーコードを1点ずつスキャンしていましたが、RFIDでは箱単位・ラック単位で一括読み取りが可能です。
といった時間短縮の効果が報告されています。
さらに、数量ミスや読み取り漏れが減ることで、誤出荷や再処理コストの削減にもつながります。
結果として、物流から店舗までの在庫移動がスムーズになり、販売機会のロスを防止できます。
バックヤードや倉庫での「在庫が見つからない」問題は、販売機会損失の要因の一つです。RFIDを導入すると、リーダーをかざすだけで在庫の位置をリアルタイムに把握でき、探索にかかる時間を大幅に短縮できます。
従来10分程度かかっていた在庫探索が、数十秒で完了するケースも珍しくありません。在庫が正しく可視化されることで、欠品・補充漏れの防止や販売機会の確保が可能になります。
バーコードスキャンや手入力では、人的ミスによる在庫差異が避けられません。RFIDは自動的に読み取るため、入力ミスや読み取り漏れをほぼ排除できます。
これにより、誤出荷・誤検品・在庫数のズレといったヒューマンエラーを抑制。データの正確性が高まることで、発注・補充の判断精度も向上します。
特に、実店舗とECを併用するブランドでは、在庫差異の減少が販売機会の安定化につながるとの報告もあります。
RFIDの活用により、アパレル業界の現場では
といった効果が確認されています。
RFIDは単なる“効率化ツール”ではなく、店舗と物流をシームレスにつなぎ、在庫情報をリアルタイムで共有することで、業務の質そのものを変えていく技術といえます。